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無料ストックフォト問題:プロレベルの写真を著作権フリーで無料シェアするのは業界を破壊する行為なのか?

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ストックフォトは写真業界の経済を担う一つの大きなパーツですが、最近はクオリティの高い写真を無料で、しかも制作者が全ての著作権を放棄し「公有」のものとするCC0ライセンスでシェアするサイトが出てきています。

この流れの中、ある元デザイナーのフォトグラファーがこういった無料ストックフォトのサイトに自分の写真の95%(!)にも上る写真をシェアした話をフォトコミュニティに投稿しました。

彼の投稿は、無料で商用利用できるような状態にして公開したことで、色々な場面で使われ、色々な所からリンクをもらったり、お礼のメールをもらったり、それをきっかけにクライアントから連絡をもらって仕事に繋がったりといった「いい事」があったという内容で、自分が撮った写真の著作権を放棄するというフォトグラファーとしてはとても怖くて二の足を踏む出来事を、「新しいマーケティング方法としても捉えられる」くらいの前向きなトーンで書いたものでした。

商用無料のストックフォトは写真業界を破壊する?

この投稿がアップされるや、フォトグラファー達から賛否両論のコメントが次々と寄せられますが、ものすごい剣幕で反対意見を述べる人も出てきます。

「馬鹿げている。こんなのは他に最低限の収入が保証されている人間が自分のエゴを満たすためにやることだ。『俺の写真は600,000回ダウンロードされた!』ってね。だが貴方はこの業界で頑張って働いている人間の市場を壊している。デザインでも何でも、他の自分のやってた仕事に戻って、こっちの業界の経済を破壊するのはやめてくれ。」

この投稿に対して多くの賛同が寄せられます。

「俺が言おうとした事を全部言ってくれた」

「1000%同意する」

これに対し、投稿者が返信します。

「私はデザインの仕事を辞めて今は100%フォトグラファーとして生活しています。私がデザイナーの頃は年収700万円ほどありましたが、毎日ストレスに追われ、何時間もスクリーンに囲まれて残業をして、全く幸せではありませんでした、今はフリーランスのフォトグラファーになることで収入は減りましたが、生活ができるくらいの収入はあります。それよりも自分の生活が豊かになりましたし、幸せもより感じるようになりました。もし一人のフォトグラファーが無料で写真を提供したからといってあなたの商売が脅かされるようであれば、自分の職業を考え直した方がよろしいのでは?」

この返信に対し、反対派はさらにヒートアップ。

「貴方みたいな社会主義者は本当にバカだと思う。自分の写真を無料であげてエゴを満足させることが豊かな生活への道だって? 貴方は業界の低迷に貢献しているにすぎない。しかもタダで。ストックフォト業界は貴方みたいなクソ野郎がぶっ壊してる。貴方の写真をタダで使ってる奴らは貴方のバカさを笑ってるよ。1、2年したら貴方の大嫌いな昔の仕事に戻る事になるだろうな、履歴書を用意しておいたほうがいいぞ。」

「無料で写真を提供する事で生活が豊かになるだって? 君の家の近くの会社で受付を一人募集してたよ。無料でやってあげますって応募したらいい。感謝した会社が君をいつか役員にしてくれるよ。君の言ってる通りならね。」

ストックフォト経済は既に死んでいる?

この反対派の剣幕に対し、投稿者の擁護派も次々と援護射撃を始めます。

「反対意見の人たちが言っている『業界の経済』なんてものは既に壊されているじゃないか。インターネットによるフリーシェアリングの流れは既に始まっているし、これからも広がっていくだけだ。どう新しい流れの中で生きていくかを考えるべきで、流れを止めようなんていうのは馬鹿げている。」

「貴方のビジネスプランはインターネットが存在するというだけで破壊されるようなものだと言っているようなものだ。あなたの仕事がなくなるのは、ビジネスマンとして、また営業マンとして能力がないだけでは?」

これに対して反対派は反論します。

「もちろん他の意見にもあるように、自分の撮った写真の著作権を放棄して無料でシェアするのは自由だ。通常、こういったことをやる奴の写真はゴミみたいなものだし、それを使うやつらもどうせ最初から写真に金を払うつもりのないクソブログの運営者だろう。だが、今回の投稿者はちゃんとしたクオリティの写真を、会社・営利法人に向かって、商用無料で自由に使わせている。そこにはカジュアルなシェアリングエコノミーとは大きな違いがあり、ビジネスとしては最悪の行為だ。」

擁護派も黙っていません。

「貴方は業界の経済を壊すとずっと言っているが、投稿者は写真で生計を立てていると言っているではないか。95%の写真を無料でシェアしているのにも関わらず、写真で生計が立てられている。この点で貴方の言っている「業界を破壊する」「ビジネスモデルとして最悪」という点は全ておかしいということになるのが分からないのか?」

「ストックフォトはもう下り坂であるのは眼に見えている。デジタルカメラが出た時にフィルムを作っている会社の多くは潰れた。電子メールが出来て手紙を送る人が減った。これは進歩に伴う当たり前のことだ。これから写真家はクリエイティビティを売りにしていくべきで、投稿者の戦略はありだと思う」

プロカメラマンが著作権フリーで写真を無料シェアする行為はありなのか?

と、このように白熱した議論を呼んだ「著作権フリーストックフォト問題」ですが、ポイントをまとめると以下のようになるのではないでしょうか。

反対派の主張

  • 一定のクオリティに達した写真を無料で配られては、写真、特にストックフォトの価格破壊が起きてしまい、そこで生活しているフォトグラファーの仕事を脅かす。
  • 無料で配っている人間は他に生活の基盤がなければやっていけないはずで、別の業界から生活の糧を得ている奴がストックフォトの経済を侵すのは不公平だ。
  • そもそも、無料で写真の著作権を放棄するという行為自体、写真やフォトグラファーの価値を下げる行為だ。自分の宣伝のために写真業界全体の価値を下げるのは馬鹿げたエゴだ。

擁護派の主張

  • カメラマンが自分の撮った写真をどこでどうシェアしようが尊重されるべきで、他人がとやかく言う事ではない。
  • ストックフォト業界が潰れるといって騒ぐのは、自分の写真にクライアントが欲しがるオリジナリティやクリエイティビティがない奴、もしくは写真ビジネスをやっていく営業力がない奴だ。
  • そもそもシェアリングエコノミーが拡大していく方向とストックフォト業界の低迷は避けられないことで、デジタルがフィルムを駆逐したように避けられない事。流れに逆らおうとするほうが愚かで、フォトグラファーは新しい価値の提供を模索すべき。

ストックフォトだけに関わらず、写真で生計を立てる人間にとって、これは考えさせられる問題です。自分と同じジャンルの写真を無料で提供する人が出てきて、その人は親の遺したアパートの家賃で食っていたとしたら? 自分の経営する写真館のとなりで趣味のハイアマに無料撮影サービスを始められたら? 皆さんはこの無料ストックフォト問題、どう考えますか?