アスリートのポートレートを中心に活動しているイギリスのフォトグラファー、リヴォン・ビス( Levon Biss)さんは、自身の仕事で培ったライティング技術や撮影技術を他のジャンルの写真にも活かしてみたいと考えていました。
そんな彼が選んだのがマクロ写真です。アスリートの写真は広い会場で大きい機材を使って撮影することが多いため、ビスさんはその逆の世界に興味を持ったそうです。
ビスさんは早速オックスフォード大学自然博物館から撮影する虫のサンプルを借りて来ると、顕微鏡の部品を一眼レフカメラのレンズの先にくっつける独自の撮影セッティングを構築して全長1cmの虫をマクロ撮影しました。
ここからがアスリートのポートレートフォトグラファーであるビスさんの本領発揮です。この1cmの虫のマクロ写真を、アスリートの広告写真さながら3メートルのプリントにすると言うのです。
マクロ写真の経験者はご存知かと思いますが、マクロ写真は被写界深度が極端に狭いという特徴があり、1cmの虫をシャープな状態で3メートルのプリントにするためにはピントをずらしながら8,000〜10,000フレームの写真を撮らなくてはいけない計算になります。
ビスさんは10ミクロン(!*人間の髪の太さが平均75ミクロン)ずつピントをずらして、1匹の虫につき2〜3週間かけて撮影しました。
そして撮影した10,000フレームもの写真をポスプロで1枚の写真にしていき、3メートルのプリントとして印刷します。このあたりの過程は下の動画で垣間見ることができます。
ビスさんの技術と努力の結晶であるこの作品群は、オックスフォード大学自然博物館で「Microsculpture」という企画展として5月27日から10月末まで展示されます。期間中イギリスに訪れる予定の方は足を伸ばしてみては。