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暗室現像のマスター技師による、フィルム写真の加工編集プロセスを垣間見る!

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フォトショップが発明される遥か前の、フィルムカメラの時代の職人達の「編集」技術は目を見張るものがあります。そんな職人の中でもグランドマスター級として知られているのがマグナムのニューヨーク本部の暗室技師パブロ・イニリオ(Pablo Inirio)さんです。

イニリオさんはマグナムの発表した数ある写真の中でも最も有名なものの多くを手掛けています。いくつか残っている、暗室での編集マークが残ったプリントを見ると、イニリオさんが暗室現像時に細部にわたって細かく「編集」していたことがわかります。

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上はデニス・ストック(Dennis Stock)さんがタイムズスクエアで撮った、有名なジェームス・ディーンのポートレイト写真です。

左側のテストプリントには、イニリオさんが右側の完成形にするために費やした努力の後を見る事が出来ます。

テストプリント上に引かれた線や丸は、イニリオさんの覆い焼きと焼き込みのプランを表しています。書かれた数字は露光時間で、どこをどう焼けばいい効果が出るか、何秒かけて露光すれば背後のビルの感じが最高になるか、などの思考と制作のプロセスが垣間見えるようです。

ボブ・ヘンリケさんの撮ったアンリ・カルティエ=ブレッソン。右手前にいるのがマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。
ボブ・ヘンリケさんの撮ったアンリ=カルティエ・ブレッソン。右手前でボケているのがマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。

これらの例でもわかるように、イニリオさんはテストプリントを作ってからそれを見ながら完成形をイメージして、どうしたらそこに辿り着くかを考えてその道筋を書き込んでいくというワークフローをとっていたようです。

もちろん、フィルム時代にはイニリオさんに限らず、テストプリントと試行錯誤の繰り返しという工程を経て最終プリントを完成させていましたが、こういった有名な写真の出来上がるまでの工程が垣間みれるというのはとても興味深いです。

また、こういった完成形をイメージをして試行錯誤を繰り返すのはデジタル時代でも同じだとも言えますが、フィルム時代のマスターの仕事の跡を見ると、同じように時間をかけて細部まで気を使おうと気を引きしめられる思いがします。

パブロ・イニリオさん
パブロ・イニリオさん

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