アンセル・アダムスといえば写真界では知らない人はいない「風景写真の父」ですが、彼の風景写真ほど知られていない作品の中に「日系アメリカ人の強制収容所」の写真があります。
アメリカは1941年の真珠湾攻撃を受け、アメリカ国内に住む日系アメリカ人を強制収容所に送る事を決定します。これにより十万人以上の日系アメリカ人が強制収容所に入りました。
アンセル・アダムスはアメリカ政府の依頼により1943年にカリフォルニアにあるマンザナー強制収容所を訪れ、そこで暮らす収容された日系アメリカ人たちの暮らしを写真に収めました。
上の写真にあるようなバラックが4つの部屋に分けられ、それぞれの部屋に1家族が入居し、トイレ・シャワー・食堂が共同という生活だったようです。
アダムス氏はこの作品群について以下のように述べています;
「この作品の目的は、とてつもない不公正の下で仕事や財産を失ったこれらの人々が、不毛の地においてでも素晴らしいコミュニティを形成することによって絶望感や敗北感を克服している様子を見せる事だった。マンザナーの作品群は、重要な歴史的なドキュメントであり、良い方向に使うことができるものだと信じている。」
実際この言葉の通り、このシリーズの中の多くの写真には大変な状況の中でも前向きに生きようとする収容者の姿が映されています。
生活の様子を写した写真
仕事の様子を写した写真
もちろん遊びの時間だけでなく、収容者は仕事もしていました。仕事の様子を写した写真も多数あります。
この写真集はまだ戦時中の1944年に「Born Free And Equal: The Story of Loyal Japanese Americans」というタイトルでMOMAでの展示と共に発表されました。戦時中だったこともあり賛否両論の様々な議論を巻き起こす事になりますが、今ではそんな状況の中でもこの作品集を発表したアダムス氏とMOMAの態度は賞賛されています。
風景写真と自然保護運動だけでないアンセル・アダムスの側面が浮かび上がる重要な作品群だと言えるでしょう。