F0.7のレンズを見た事はありますか?
「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」などの作品で知られる巨匠、スタンリー・キューブリックはF0.7のレンズを使用していました。
キューブリックは、「バリーリンドン」を撮影する時に、ロウソクの光のみの室内シーンを含め、全てを自然光で撮影する事を決めました。
それでものすごく明るいレンズが必要になったキューブリックは、レンズを探しますが、それだけの明るさがあるのはNASAのF0.7のレンズだけであることを知ります。キューブリックはミッチェルの35mmの撮影機をこのF0.7レンズが使えるように改造し撮影に臨みますが、ロウソクだけで照らされた室内シーンはF0.7レンズでも明るさが足りないことに気づきます。
諦めない巨匠は、より速く、より明るく燃えるロウソクを作ることで見事明るさの問題を解決しますが、問題はそれだけではありません。
F0.7では被写界深度は恐ろしく狭くなり、役者が少し動くとボケてしまうのです。キューブリックは役者を横側にのみ動くよう訓練しこの問題を解決。このレンズありきで、他の要素をこのレンズに合わせる形で作品を作り上げたとも言えるでしょう。
現在、この幻のF0.7のレンズとそれを付けていたミッチェル撮影機がサンフランシスコのコンテンポラリー・ジューイッシュ博物館のスタンリー・キューブリック展で展示されています。10月末までやっているので、それまでにサンフランシスコに行く予定のあるラッキーな方は訪れてみては。
また、このキューブリック展は巡回予定もあるそうなので、いつかは日本にも来る事を期待します。