映画製作者であるヴァシ・ネドマンスキー(Vashi Nedomansky)さんは制作中の映画で回想シーンを撮る必要がありました。
そのシーンはイラクの砂漠で軍用ジープからキャラクターが降りてくるシーンがあったのですが、ひとつの回想シーンのためにイラクに行ったり軍用ジープを用意したりする予算はありません。
どうしようか? とアイデアを捻っていたネドマンスキーさんは、スピルバーグが「未知との遭遇」で大きな船がモンゴルのゴビ砂漠に乗り上げているシーンを作った時に、模型の船をカリフォルニアのモハーヴェ砂漠で撮ったことを思い出します。
巨匠スピルバーグは、カメラの近くに模型を置き、広角のレンズを使い、深くフォーカスを合わせて人物をかなり遠くに配置することで強い遠近感を作り出し、存在し得ないシーンを作り上げたのです。
ネドマンスキーさんはこれに着想を得て、近くのウォルマートで23ドルのおもちゃの軍用ジープを買って、カルフォルニアの砂漠に向かいます。
砂漠についたネドマンスキーさんはカメラから約60cmくらいのところに玩具のジープを配置し、俳優をその先、約12mくらい離して配置。F値を11にして奥まですべてフォーカスを合わせます。
さて、その結果は…?⬇
かなり自然で、知らなければ模型と気づかないレベルのクオリティではないでしょうか。
こうしたアイデアと工夫によって、本来ならば大規模セットが必要なヴィジュアルが低予算で作れるのはとても面白いです。
大規模予算、最高の機材、多くのスタッフを擁するハリウッドのプロダクションでもこのおもちゃ(模型)+遠近法でのビジュアルを目にする事が結構あります。例えばアビエイターやウルフ・オブ・ウォールストリートなどでこの手法が使われています。
これはやはり、「最も安くて簡単な問題解決方法が最も現実的で効果的な解決方法であることがたまにある」からだと思われます。お金と時間をかけるのが必ずしもベストでないこともあるわけです。
以前紹介したフェリックス・ヘルナンデス・ロドリゲスの写真作品でもおもちゃを使って色々な世界観を表現していたように、これはもちろん映像だけでなく写真の世界にも当てはまります。
アイデアとちょっとの工夫だけで、低予算で面白いヴィジュアルのできるおもちゃ+遠近法での制作、皆さんも試してみては。